2019/09/05歯周病で早産のリスクが上がる?妊娠と歯周病の関係について
こんにちは!歯科衛生士の笹井です。
妊娠すると歯周病のリスクがあがることをご存知でしょうか?妊婦が歯周病に罹患すると早産のリスクがあがります。
近年出産年齢の高齢化もあり、妊婦の歯周病 罹患率も上がっています。
正しい知識を身に着けて、赤ちゃんを守りましょう!!
そう、今回は妊娠 性 歯周 炎(歯周病)についてです!!
■歯周病と早産の関係
歯周病による早産と低体重児
(早産:妊娠37週未満での出産/低体重児:2500g未満での出産)
出産が近づくと、「プロスタグランジン」という炎症抑制物質が子宮で分泌され分娩が始まりますが、歯周病による炎症が広がると、その炎症を抑えようと同じ炎症抑制物質(プロスタグランジン)が作られ、子宮の収縮が促進されて早産となるのです。
切迫早産による全体安静、もしくは切迫早産による入院の経験をよくききます。
切迫早産とは早産のリスクが高い状態で、子宮の出口が開きかけてかろうじて赤ちゃんが母体にとどまっている状態。
◇絨毛膜羊膜炎について
絨毛膜用膜炎とは、
切迫早産の原因の中でも最も多いのが絨毛膜羊膜炎という、感染です。本来子宮内は無菌状態ですが、膣内の常在菌のバランスが崩れ、子宮に細菌が侵入、子宮頚管まで炎症が広がってしまうことで破水を誘発します。
切迫早産であった妊婦の歯肉は出血傾向にあり、歯周ポケットが4ミリ以上の歯周炎状態が多いという報告があります。歯周病菌の子宮への感染がおこると赤ちゃんの発育不全、炎症抑制物質(プロスタグランジン)による子宮収縮による早産へとつながります。
絨毛膜羊膜炎にかかっていた妊婦の臍帯からは歯周病菌(P.gingivalis)が検出される場合が多いという報告もあり、歯周病菌が胎盤や羊水、臍帯に付着する可能性が考えられています。
母体が歯周病である場合、通常の出産よりも低体重児での出産の割合が多いという結果もでています。赤ちゃんの正常な発育のためにも歯周病にならないよう、もしくは早期に発見することが重要です。
妊娠を希望する女性、そのパートナーもぜひ、歯科検診を受けましょう!(歯周病の感染経路№1はパートナーからです。)
■なぜ妊婦は歯周病にかかりやすい??
歯周病は細菌感染症です。妊婦になったから歯周病菌の感染リスクがあがるわけではありません。もともと感染している菌が、妊娠によって増悪し、歯周病が悪化するのです。
ポイントは3つ。
① つわりなどによる食生活の乱れ
② つわりなどによる磨き残し(プラーク)の増加
③ ホルモンバランスの変化
以上の3つについて解説していきます。
◇① つわりなどによる食生活の乱れ
妊娠初期は人によりますが、つわりなどの体調変化が現れます。
嗜好の変化や、食べていないと気持ちが悪くなる食べつわり…とつわりの症状は様々。栄養の偏りや、食べるタイミングの変化などで口腔内の状態は悪化することがあります。
<甘味増加の注意点>
「糖化」という言葉が一時はやりましたが、体の組成、たんぱく質の結合を弱めます。そのため血管壁が弱体化し、出血傾向になります。(妊婦に限らず)
糖化が進むと、しわが増えるなど肌質のダメージが大きくなるのもそのため。
また、糖はむし歯菌の栄養源であるため、むし歯も進みやすくなります。
出血傾向が強くなるということは、歯肉からの出血も増えます。歯周病菌の栄養源はタンパク質。血液の中には良質なたんぱく質が多く含まれるため、歯周病菌は増悪し、歯周組織の破壊を進めます。
<食べづわりの注意点>
常に食べるということは、口腔内が常時酸性に傾くのでむし歯リスクが増加します。口腔内の菌数も増加するため、歯肉炎を発症しやすくなります。歯肉は出血傾向になるため歯周病菌は栄養源の多い環境となります。
◇② つわりなどによるプラーク(磨き残し・細菌の塊)の増加
妊婦の中には歯磨きで気持ち悪くなる方もいらっしゃいます。
特に奥歯の歯磨きが難しくなるようです。プラークが増えれば細菌の増加→歯肉の出血傾向→歯周病菌の増悪へとつながります。プラークを残さないことが最大の歯周病予防です。
歯ブラシをタフトブラシ(毛束が一つの小さな歯ブラシ)にする、歯磨き粉を泡立たないものに変えるなど、それぞれの症状に合わせた対策が必要です。
うえの歯科医院の衛生士は予防のプロ!一人一人にあった対策を一緒に考えます!
◇③ ホルモンバランスの変化
原因となる歯周病菌
歯周病は細菌感染症です。原因となる歯周病菌は様々な種類がいますが、妊娠性歯周病は「プレボテラ・インターメディア」という歯周病菌が深く関係しています。
この歯周病菌(プレボテラ・インターメディア)はエストロゲンという女性ホルモンによって発育が促進されます。このエストロゲンは妊娠中の女性、思春期の女性に多く分泌されるため、思春期性、もしくは妊娠性歯周炎を誘発します。
■妊娠中の歯周病を予防する方法
様々な要因が重なり、妊婦の歯周病は増悪します。
正しい知識を身に着け、効果的に予防をしましょう。
① 体調がいい時は完ぺきな歯磨き!
② 乾燥対策を。
③ 歯医者に相談する。
◇① 体調がいい時は完ぺきな歯磨き!
体調不良時はその時できる予防を、でも体調がいい時は完ぺきな歯磨きをして口腔衛生を保ちましょう。
◇② 乾燥対策を。
赤ちゃんは水分がとても多く、また羊水にもとられるため妊婦は乾燥しやすいです。口腔内が乾燥すると菌が繁殖しやすくなります。糖分の入っていない水分(水やお茶)をしっかりとって乾燥防止を!
また、ガムをかむことで唾液の分泌が促進されます。キシリトール100%のガムにすることでむし歯も予防できます。唾液腺のマッサージなども取り入れて口腔内の乾燥防止を!
◇③ 歯医者さんへいこう!
歯 石や歯周 ポケット内の汚れは自分では除去できません。
一度専門家に診てもらって、口腔内を整えてから赤ちゃんを迎えましょう!
むし歯菌の感染はママから。ママの口腔内にむし歯菌がいると、子どももむし歯のリスクがあがります。歯周病による早産、低体重児の影響ももちろんですが、子どものむし歯リスクは親の影響が多大。子どもの成長、健康のために、マイナス1歳からのケアをぜひ!!!
妊婦の歯周病リスクの増悪はホルモンバランスの乱れが関係していましたが、実は更年期にも歯周病発症の危機があります。更年期とは、閉経前後の数年をいいます。
■まとめ
更年期には女性ホルモンが減少します。女性ホルモンが減少することで
・ドライマウスに
・免疫力の低下
・自律神経失調症を誘発
・生活習慣病の誘発
・歯周病の誘発
などの体調変化が起きます。
ドライマウスとは口腔内が乾燥することで、乾燥すると歯周病菌が増え、歯周病の増悪を招きます。また、体調不良が増えるため、歯磨きをさぼりがちに。。。
歯磨きができないと口腔衛生が悪化、菌が増えむし歯や歯周病の悪化につながります。口腔内のケアは怠らず、歯磨きがおっくうなことが増えるのであれば電動歯ブラシを使用してみては?
日ごろから歯科定期健診に通って、身近な衛生士に相談できる環境を作りましょう!治療歯科より予防歯科!!
うえの歯科医院では、検診も行っています
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